【書評】「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」は、実践的な心理学や勉強法が盛りだくさんでスゴイ!

書評

【2015年5月1日追記】

本日、映画「ビリギャル」(原作「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」)の上映が開始されました!!
時間を見つけて見に行きたいですね〜(≧∇≦)/

映画「ビリギャル」| 公式サイト

本の概要

本屋さんで見かけたときに「自己啓発的な小説」かな?と思って手にとったら、実話だったと知って、即買した本です!!

受験生に限らず、保護者や社会人にまで、すぐに使える心理学のテクニックや学び方の技術など盛りだくさんで、読み物としてもとても面白いので、ちょっとでも興味を持ったらぜひ手にとって読んでほしい1冊です!!

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一人の教師との出会いが、金髪ギャルとその家族の運命を変えた――
投稿サイトSTORYS.JPで60万人が感動した、笑いと涙の実話を全面書き下ろしで、完全版として書籍化。
子どもや部下を伸ばしたい親御さんや管理職に役立つノウハウも満載。

「ダメな人間なんて、いないんです。ただ、ダメな指導者が、いるだけなんです」

「子どもにとって、受験より大事なのは、絶対無理って思えることを、やり遂げたっていう経験なんです」

子どもや部下を急激に伸ばせる心理学テクニック&学習メソッド等も満載。

〈主な登場人物〉
【さやかちゃん】偏差値30のギャル。天然ボケ回答連発も、へらず口が得意。校則違反はするが正義感は強い。
【坪田先生(僕)】心理学等を使って、多くの生徒の短期間での偏差値上昇(20~40上昇)を請け負うカリスマ塾講師。
【ああちゃん】悲しい子ども時代の経験から、熱い子育て論を持つお母さん。一風変わった子育て法に世間の風当たりは強い

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本書のポイント

自分から好意を与え続ける

当時の彼女の学校の成績は、端的に言うと学年ビリ。偏差値は30以下。

ただ「僕は彼女がぱっと挨拶を返したのを見て、この子は素直だ、と感じていました。
心理学を学んで生徒の指導に活かしてきた僕は、いつも初対面の時のしぐさや反応で、生徒の性格を見極め、指導方法を切り替えていきます。

中には正直、僕でもキツいなと思う子はいます。それは初対面の時に、教師を恐れていて目を合わせない子、そして挨拶をしてくれない子です。

ただ、そういう時は、いちいちそれをとがめずに、好意を与え続ける、礼儀を尽くし続けることが大切です。すると「相手も(子どもも)それを返してくるようになるからです(これを心理学で「好意の返報性」と呼びます)。
こういう時にけっしてとがめたり、しかったりしてはいけません。そうした子にまた「新たに自分をしかる大人が現われた」と思わせてはいけないのです。

だから僕が初対面の時に気をつけているのは、子どもに対して、背筋を伸ぱして目を合わせて、しっかり挨拶することなのです。

「共に学ぶ」が信頼関係を築く

なお、このように「なぜ?」「なぜ?」と生徒に聞かれていくと、教師側が知らない問題に案外早く到達するものです。そんな時、「うるさい!」とごまかしたり、「先生に恥をかかせたいのか?」と内心、怒りを覚えてはいけません。

僕は、そういう場合、「先生もそこまでは知らないから、一緒に調べてみようか」と言っていましたし、僕が現在経営する塾の講師達にもそう指導しています。

(略)

結局は、そうした姿勢が生徒との深い信頼関係を築くことになると、僕は信じています。

モチベーションを保てる課題の出し方

勉強のやる気を引き出す際に大事なのは、適度なハードルを越えた感なのです。
ですから、前述のように、僕が生徒に英単語を覚えさせる際には、クイズ形式にして、「10、9、8…」と言って制限時間を設けて答えさせています。で、もう少しで答えが出そうだな、と思ったら、「1、0.9、0.8…」と刻んでいくわけです。で、0.3のときに答えられたら、生徒には達成感が出てきます。それが生徒のやる気を引き出すのです。

先生の役目は「やってて楽しい」を見つけること

結局は、「勉強させなきゃ」とか「成績を上げなきゃ」とかではなく、いかにその場の勉強を「楽しい」と思わせるかが大事なんですね。そう言い換えてもいいでしょう。
ですから僕は、教師の役目は、純粋に「やってて楽しい」を見つけてあげることかな、と思っています。

なので、生徒をしかったり、脅したり、悲しい思いをさせたりして、その感情を利用して何かを乗り越えさせようとする意味は無いわけなんです。そういう指導しますと、勉強=不快、先生=不快と脳が認識するようになり、無意識のうちに、その不快な対象が発する情報を、脳が拒絶するようになりますので、子どもや部下の作業効率は、むしろどんどん下がっていくんです。

暗記のコツ

受験には暗記力が欠かせませんが、暗記にもコツがあります。脳の記憶の仕組みを逆手に取る方法です。
なお、暗記に際して、昔ながらのやり方である「何回も書く」のは大間違いです。何度も書くと、脳は「1回1回の記述は大切ではない」と認識します。そもそも何度も同じことを書くと集中力が下がるのが普通です。

そこで、「ホールド法」と「ステップ法」を使いましょう。自分に合う方法を選んで下さい。

まず、「ホールド法」は、いちど覚えようと集中した後で、15秒〜30秒、ぼーっとして、何にも考えないようにしてから、思い出そうとする方法です。これは脳の作業記憶(すぐに忘れても良い記憶を一時的に保持する脳の能力)が15秒〜30秒しか持たないことを逆手に取った方法です。これにより、脳が、その情報を長期記憶へと移行しやすくなります(=暗記しやすくなります)。

いっぽうの「ステップ法」とは、次のような暗記法です。まず、1を集中して覚えたら、次は2を覚えます。次に1、2の記憶内容を目をつぶって「声に出し」ます。言えたら、3を覚えます。次に1、2、3の記憶内容を目をつぶって「声に出し」て復唱します。次は4を覚え、1、2、3、4を目をつぶって「声に出し」ます。そして最後に声に出しながら、一度だけ書きます。その後、答え合わせをします。これらをすらすらできるようになるまで繰り返すと記憶に定着しやすくなります。

感想

その関係はカウンセリングのように

読んでいてはっきりとわかるのが坪田先生(著者であり、さやかちゃんの塾講師)とさやかちゃんとの信頼関係です。

さやかちゃんは、坪田先生の言うことなら絶対大丈夫と信じて疑わず、素直に学び続けて慶応大学に合格するという結果を出しています。

しかし、何よりも注目したいのは、坪田先生の方から先にさやかちゃんのことを信じ続けたということ。偏差値30の女子高生(高2)をです。

引用した箇所にもありますが、坪田先生は、初対面のしぐさや反応・挨拶などからその子がどんな子で、どんな指導法がいいか見極められるそうです。

おそらく「できない子なんていない」と信じられているのではないでしょうか。

どの子も一人の存在(Being)としてOKで、ただ自分にあった学び方(Doing)を見つけられていないだけ。

その存在を信じてもらえているからこそ、坪田先生を信じて「共に」学んでいこうとすることができるのだと思います。

学ぶモチベーションを維持する

信頼関係を築いた上で、技術的なところになります。

まずは、「学ぶ」ということに対してのモチベーションを維持するということ。ただがむしゃらに勉強しているだけでは、人のやる気は続きません。

本書では受験に大事なこととして3つの項目が挙げられています。

  • 根拠なくとも、自分が成功する(天才である)ことを知っていること
  • 目標(自分にとって楽しいと思える夢)を立てる
  • 目標から逆算した計画を立てる(その子の性格・性質・習慣を把握した上で)

この3つの項目は、受験にかぎらず社会に出てからももちろん重要なこと。だからこそ、学生時代に受験勉強を通してこの3項目を身につけておけるのは、貴重な財産になりますね。

他にも

  • 自分自身の価値を認めさせる(ピグマリオン効果)
  • 適度なハードルを乗り越えさせる
  • やるべきことが「まさにそこにある」と感じさせる(臨在性)
  • まさに今自分がやらなきゃいけない(迫真性)

など、心理学のテクニックを活用したモチベーション維持の方法が、実例を交えて書いてありました。どれも難しいことではないので、生活や学習、仕事の中にぜひとも取り入れていきたいですね。

効果的な「学び方」を知る

ただ量をこなすだけ、ただやみくもに勉強するだけでは、あまりに勉強の効率が悪すぎます。

これだけビジネス書が発刊さていて、できる社会人の働き方・学び方が注目されているにもかかわらず、なぜ学校教育の現場ではなかなかそこにフォーカスできないのか…とどうしても感じてしまいます。

「とにかく(宿題の)ノートは隙間なくびっしり書きなさい」「同じページに4教科の宿題をやってきなさい」なんて指導が今でも行われていることにビックリすることも。(実話)(もちろん最新の学びを取り入れられている熱心な先生方もいらっしゃいますし、現場が忙しすぎる事情もあると思います)

さてさて、グチはともかく、本書で紹介されているのは、

  • 英語
  • 小論文
  • 歴史

「根拠ある」効率的な学び方。

  • 脳の仕組みに基づいて「暗記」を効果的にする方法(引用しました)
  • 復習まで考えられたノートの取り方
  • 英語の長文読解の方法(文章の構成を捉え方)
  • 小論文のオススメ学習法
  • 「学習まんが少年少女日本の歴史(23冊セット)(小学館/1997年12月に出た改定・増補版)」で歴史を学ぶ

など、意味のある「学び方」が多数紹介されていますので、受験生に限らず、何かを学んでみたい全ての人にオススメです。

極端な話、自分にあった「学び方」を知り、身につけてしまえば、自学自習でほとんどのことを学ぶことができます。(今はインターネットや図書館もありますので)

なので、「学び方」を学ぶことは、本当に重要なんですね。
(ぼくの講座にきてくださる大人(社会人)の方々も、マインドマップなどの「学び方」を学びにきてくださっています)

徹底して娘を応援する家族の関わり

さやかちゃんの慶応大学合格に向けての勉強が、学校からの帰宅後、朝までほとんど寢ずに続くようになり、学校では爆睡するようになってしまったそうです。

その時の学校の先生とお母さんとの会話が非常に印象的でした。

「先生。ご存じだと思いますが、さやかは今、目標を見つけて、必死なんです」

ええ、知ってますよ。慶応でしょう(笑)。そういう馬鹿げたことをいまだに言い張っていますが、到底、行けるわけがありません

「ええ、でも、みなさんが絶対に無理だと思っていることを、さやかは成し遂げようとしているんです。ですから、塾でも何時間も勉強し、家でも朝までずっと寝ずに勉強しています。だったら、あの子はいつ寝ればいいんですか?
あの子には、学校しか、寝る場所がないんです。先生は、さやかを慶応に導こうとしてくださっていない。無理だと言って、笑っておられる。でも、塾の先生は“行ける”とおっしゃる。だったら、さやかにとって信じるべきは塾の先生じゃないですか。
学校の授業はさやかにとっては意味がないんです。大学への推薦は要りません。ですので、どうか寝かせておいてください。無茶はわかっていますが、今だけ、あと何日かだけでも、見逃してやってくださいませんか」

それでも抗弁をし続ける先生に、お母さんは3時間粘り続けて、なんとか授業中の居眠りを許してもらったそうです。

「いい」か「悪い」か、読んだ人によって感じ方は違うでしょう。

それでも、ぼくはさやかちゃん本人が慶応大学合格に向けて、本気でがんばっている姿を「無理だ」と笑うこの担任を「先生」だとは思いたくありません。

植松努さんの「NASAより宇宙に近い町工場」にも書いてありますが、「挑戦したこともない人の『どーせ無理』という根拠の無い憶測」が、いまだに子どもたちの夢や情熱を奪い続けています。

掲げた夢を心から応援し、そのためにどんな評価も厭わずに行動するお母さんや坪田先生の姿こそ本当の教育者なのではないかと感じます。

本書や「NASAより宇宙に近い町工場」が広がることで、少しでも間違った進路指導がなくなり、子どもたちの夢を応援できる大人が増えることを願うばかりです。(ぼくも微力ながら講座などで、このような話をさせていただいています)

受験生から社会人まで必読の一冊!

単なる受験テクニック本ではありませんし、都合のいい物語でもありません。
実在した「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に合格した話」です。

そこには夢をつぶそうとする大人が出てきます。
夢を応援する大人が出てきます。
どんなふうに応援すれば彼女が合格できるか、具体的な取り組みが書いてあります。
彼女や家族・塾の先生の心の葛藤や、目標達成の喜びが描かれています。

この本は、慶応大学合格という目標を達成するまでの過程を通して、「夢の叶え方」「人生における学び方」「信頼関係の作り方」を身につけた一人の女性の話です。
そして、それはこれから目標が変化して社会人になったとしても、一生活かし続けることのできる貴重な学びになったことは間違いないでしょう。

読み物としても非常に面白く、あっという間に読めてしまいますし、受験生に限らず、社会人まで一人でも多くの方に読んでほしい一冊だと感じました!!

ビリギャル公式サイト|『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』
投稿サイトSTORYS.JPで話題となった実話を全面書き下ろしで完全版として書籍化。 高校2年生にして、小学4年レベルの学力のギャルをいかにして慶應義塾大学現役合格にまで導いたかが、軽妙な、笑いを誘う …

目次

第一章 金髪ギャルさやかちゃんとの出会い
膨大な可能性を秘めたへそ出し金髪ギャル
高校2年で、strongの意味がわからない
「聖徳太子って、超かわいそうじゃね?」
東西南北がわからない
見え始めてきた変化

第二章 どん底の家庭事情、批判にさらされた母の信念
「この家族は、失敗だ! 」
さやかちゃんとお母さん
モンスターペアレント? お母さんの過去と信念
「子どもが非行に走った原因は、あなた(母親)だ」
ずるくて汚い姿を見せることが教育なのか
さやかちゃんがギャルになった理由
ギャルの頭の中
ギャルさやかちゃんと僕との出会い
「よく笑う先生だな」

第三章 始まった受験勉強、続出する珍回答
「すみません、10分だけ寝てもいいですか?」
「全然ダメじゃん! 」とバカにされないように
見え始めた(?)成長
「絶対に見返してやる」
「どうしてそんなに不細工になったの?」
「その質問、絶対されると思って、事前に調べてきたんだよね」

第四章 さやかちゃんを導いた心理学テクニックと教育メソッド
さやかちゃんの戦いは、どんなものだったのか
偏差値30の子が慶應を目指すと言う意味
目標・計画の立て方・モチベーションの上げ方
成長のためのその1~メンタル
成長のためのその2~目標
成長のためのその3~計画
さやかちゃんががんばれた理由
モチベーションを保てる課題の出し方
さやかちゃんに課した基礎固め
授業中のノートの取り方
暗記のコツ
英語の効率的な学習方法
英和辞書の効果的な使い方
英単語の効果的な覚え方
英文法の効果的な学習法
英語の長文読解・速読に対応した学習法
英文精読の方法
リスニング対策――理論編
リスニング対策――テクニック編
さやかちゃんと英語の長文問題の意外な落とし穴
小論文に関する、おすすめの学習法
小論文と、さやかちゃん
さやかちゃんと日本の歴史
偏差値30の子に効果的な日本史の学習法
さやかちゃんと日本の近代

第五章 見えてきた高い壁――「やっぱり慶應は無理なんじゃないかな」
あと半年の段階で、慶應合格の可能生は「E(絶望的)」
「別に慶應じゃなくても、いいんじゃない?」
もうダメだと泣いていた夜の出来事
雨の中、ああちゃんと見に行った慶應大学
「山登りって、どうやって登るか、わかる?」
パパの変化
有効だったストレス解消法
「あの子には、学校しか、寝る場所がないんです」
「本当に、慶應に行きたい」
さやかちゃんを見つめる二人の目線

第六章 偏差値30だったギャル、いよいよ慶應受験へ
「あと1カ月あれば、準備万端だったのに」
最初の関門は、西の慶應と言われる関西学院!
上智大学の受験で、予想外の大苦戦
塾に通ってくる最後の日の出来事
いざ、本命・慶應大学文学部の入学試験へ! しかし……
過去問の出来が最悪だった総合政策学部の受験へ
試験中によみがえった、塾での会話

第七章 合格発表と、つながった家族
関西学院、明治大学に合格! でも本命は……
「努力しても、ムダなんだ」
最終結果
出たくなかった電話
「お前、きったない顔しやがって」
それからの家族

あとがき

さやかちゃんからの手紙

巻末付録 坪田式人材育成のためのテクニック

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