本の概要
誕生日にいただいた喜多川泰さんの「One World」
一話一話が短篇小説でありながら、大きな一冊の長編小説でもある本作。
読み始めるととまらずに一気に読んでしまいました。
ちょっとした一言が、誰かの人生を大きく輝かせます。
自分の心がけている行動が、誰かの心を大きく揺るがします。
人と人との「縁」が紡ぎだすステキな「One World」の物語。
読むと心が暖かくなり、行動が変わり始める一冊です。
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「僕たちはたくさんの人とかかわりを持って生きています。毎日顔を合わせるような深いものから、ある日、あるとき、たまたま隣に座ったという「袖振り合う」程度のものまで。それらすべての他人とのかかわり、経験したすべてのことから、僕たちは何かを感じ、少しずつ、ときには大胆に自分の中に取り込み、自分というものをつくっていきます。
この作品は、短編集のように見えて、つながりを持った一つの長編であり、僕たちの人生そのものを表しています。
それぞれの物語を楽しむだけではなく、それぞれの人生は、他者の人生と切り離すことができない縁でつながっていて、別々の物語のようにみえて、実はそれが一つの長編の物語になっていることを感じてもらいたい。『One World』というタイトルには、そんな思いが込められています。」(著者あとがきより)
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本書のココがポイント
今の結果がすべてではない
「お前は気づいていないかもしれない。でも、佳がフルスイングする姿は、ほかのチームメイトに勇気を与えてきたんだ。日間にボールに食らいつく姿は、チームメイトにあいつががんばっているんだから俺も負けられないという強さを与えてきたんだよ。一番身体が小さいあいつがあんなにがんばっているんだ、俺も負けないぞってみんな思っているんだ。周りに勇気を与える、佳みたいな存在も、試合で活躍する以上に、かっこいいと思わないか?」
最初の野球少年とコーチの物語。
指導者とはかくあるべきだと思いながら読んでいました。
指導者と呼ばれる立場の人間でも、ついつい今現在の「結果」だけを見て人を評価してしまう方もいます。
そのため、結果が出なければ叱責する。
→叱責されたことで、次も緊張ししてしまう。
(また叱責されるかもしれないという思いから)
→また結果を出せない。
…
指導される側はこんな悪循環にはまりこんでしまうんですね。
これではいつまでもいい結果を出すことなんてできません。
だからこそ、現状の結果だけではなく、これまでの「プロセス」・これからの「成長」に目を向けることが重要になります。
結果を出せなかったとしても、その取り組みの途中には必ず「褒めどころ」があります。その先には、「結果につながる成長」があるはずです。
そこに目が向くようなメッセージを伝えるんですね。
少なくとも、この話の有馬コーチはまさにそんな励まし方をしていました。
こんなコーチや上司に指導してもらえたら、自分の可能性をさらに伸ばすことができて幸せですよね。
来たときよりも美しく
でも、考えてみれば、僕たちは自分がつくったわけではない世の中に生まれてきて、ほんの数十年生きて、この世を去っていく。
だから、自分がこの世に来たときよりも美しい世界にして去りたいと思ったんだって。少なくとも先生はそういう人生にしようって。それができれば、自分という人間がこの世に生まれてよかったって自分で思えるんじゃないかって。
「来たときよりも美しく」の言葉にガンと衝撃を受けました。
正直自分一人のときに読んでいたら、まだ頭に「?」が浮かんでいたかもしれません。しかし、今子どもがいることことを考えると、これからの時代を生きていく子どものために、今よりももっと美しい世界に生きることができるようにと感じます。
大きなことは個人で今すぐできないかもしれませんが、ゴミ拾いだったり、ホテルのチェックアウトのときにシーツをキレイにしたりと、小さなことを一人ひとりが行動することで、結果として大きなうねりになるのではないでしょうか。
まずは自分がその一人になるという決意が大事ですね。
「立つ鳥跡を濁さず」の本当の意味って、こういうことなのかもしれませんね。
苦悩が今の私を作り上げている
「もしも、生まれたときから今日まで、悩みや苦悩と無縁の人生を送ってきたとしたら、私はきっと『私の何がいけなかったのか』なんて考えたこともなかったでしょう。だとすると、私が今持っているたくさんの学びや習慣は1つも手に入らなかったでしょう。そうすると、私が自らを省みて、自らを改めることによってその後、手に入れた幸せの全てが、私の人生では経験できなかったことになってしまう。それはもはや、私の人生とは言いがたい。つまりね、『苦悩』こそが、今の私を作り上げたと言ってもいいほどなんですよ」
「苦悩」があるからこそ、「どうすればよくできるのか?」を考えられるんですよね。もしも「何の苦悩も問題も抱えることのない人間」が存在するとしたら、きっとそれは「何の成長もない」と同じ意味になるのかもしれません。
ぼく自身も、もし過去の辛い経験や苦悩がなかったなら、今のようにコミュニケーションの講師なんてしてなかったでしょうし、こんなに本を読んで感銘を受けることもなかったでしょう。
「苦悩」が人間に深みを与えてくれます。
「苦悩」が人間の可能性を広げてくれます。
泣いた数だけ、悩んだ数だけ、ぼくらは成長しているんですね。
好きだから大切にするのではなく、大切にするから好きになる
「何で掃除なんか?」
「自分の通っている大学を好きになろうと思ってね」
「そんで好きになったから掃除をしたのか?」
「いや、そうじゃない。好きになろうと思ったから、掃除をしたんだ。自分が心から大切にしているものは、大好きになるんだってことをある人に教えてもらってね。やってみることにしたんだよ。そしたらそのうちバス停に並んでいる人から、声をかけてもらえるようになって、僕も掃除をしながらすれ違う人にあいさつをするようになったんだ」
本書を読んで最も心を打たれた言葉です。
「好きだから大切にするのではなく、大切にするから好きになる」
今まで「好きだから大切にする」のだと勘違いしていましたが、よくよく考えるとそれでは、好きなものしか大切にすることができません。そして「好き」が広がることもありません。
しかし、「大切にするから好きになる」であれば、大切にすることで、いくらでも「好き」になることができるんです。自分の行動ひとつでどこまでも「好き」を広げることができます。
ヒト・モノ・コト全てにおいて言えることなのではないでしょうか。
「好きになりたいから大切にする」
今更ながらコミュニケーションの根っこのところに気づかされたように感じます。
そして、仕事の本質のところにも大きく関わりがあることにように感じます。
まとめ
全体を通すと、短編の登場人物が輪のように関わりあって、ステキな一つの世界(「One World」)をつくりあげているという、心を優しく包み込んでくれるステキな小説でした。
そして、「関わり」というのも大げさなものではありません。
ちょっとした一言だったり、中には一言も交わさず、ただその行動を見ただけという小さな小さな「関わり」がほとんどです。
でも、これはまさに、ぼくらの生活や人生での「人との関わり」そのものなんですよね。「人生を一変させてしまうような出逢い」というのは、きっとちょっとした小さな「関わり」にあるのかもしれません。
ぼくらの生き方を変えてしまうような、そんなステキな「小さな関わり」が、きっとどこかで起こっています。
そして、同じようにぼくらの何気ない「小さな関わり」が、誰かの人生を大きく動かしているのかもしれません。
だからこそ、後悔のないようにひとつひとつの関わりを大切にしていきたいですね。
この素晴らしい本をプレゼントしてくれたあさみんに感謝。
そして、この世にこのステキな話を送り出してくださった喜多川泰さんに感謝です。
目次
ユニフォーム uniform
ルームサービス room service
卒業アルバム classbook
ホワイトバレンタイン white valentine
超能力彼氏 extrasensory perception boy
ラッキーボーイ lucky boy
夢の国 utopia
「どうぞ」 “have a seat”
恋の力 power of love
「One World」に込めた思い
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